タピスリー画家・下絵師協会（A.P.C.T.）の会員であったヴォジャンスキーは、戦後すぐリュルサに続いてタピスリー制作に没頭した数多くの芸術家の一人です。彼の作品（1989年の展覧会カタログによると下絵159点）は、当初はリュルサの影響を受けていましたが、1960年代に入ると（必ずしも自認してはいなかったものの）抒情的な抽象表現へと進化しました。そこでは宇宙・天文学的なテーマが、分解され動きのある鳥のようなフォルムで表現され、下絵はより洗練され密度の低いものとなってゆきました。ヴォジャンスキーは常に「自分は画家である」と主張していましたが、タピスリーについても次のように達観しています。「タピスリーの下絵を制作することは...もはや私たちの手を離れた空間について、その寸法やスケールの観点から考えることであり、また、私たちの存在を変容させ、強調する大規模な表現が求められるのです」
 
『ヒアデス星団』は、そのタイトルが示す通り、ウォジャンスキーの 「宇宙的」なインスピレーションに根差した作品です。宇宙というテーマは60年代を通して追及され、『宇宙』（1968年、ストラスブール大学蔵）、『銀河』（1970年、リュクサンブール宮殿－元老院蔵）といった作品で頂点に達しています。
 
遍在するシネ（混色ぼかし）と単色の部分が微妙な色彩の陰影の中で調和する本作品では、好奇心をそそられる未知の世界が描かれており、顕微鏡で見た微小細胞のようにも、無限に大きなもののようにも見えます。