フジタは、ビエーヴルのMoulin de Vauboyen （ヴォーボワイヤンの水車小屋）でタピスリーが制作された数多くの画家のうちの一人で、そのためタピスリーにMVというマークが織り込まれています。この水車小屋は1959年にピエール・ドゥ・タルタによって具象芸術に特化した文化センターに改築されました。その後コクトー、カルズー、エルニ、ヴォルティをはじめとする幾多の芸術家がここを訪れ、数多くの記念碑的作品や、応用美術の作品（特に書籍の挿絵）を制作しました。
 
フジタがタピスリー用に描いた下絵はわずか数枚で、その全てがビエーヴルのピエール・ドゥ・タルタの下で織られています。本作品は、他のタピスリー作品とは異なり、ほぼ単色で、絵画のしなやかな筆致とは程遠い様式化がなされるなど、彼の絵画作品とは一線を画した作風となっています。聖書の題材については、彼がカトリックに改宗したばかりであることを表しています。
 
また、類似した題材と寸法で、より明るい色調のタピスリーもビエーヴルで制作されています。